声優科

2014年 06月 27日

【授業レポート】声・俳基礎クラス(土曜)

「このクラスは元気のいいクラスだね!」と各講師の方々が口々におっしゃるこのクラス。
いったいどんなクラスなんだろう?ということで、事務局・山下が、授業見学をさせていただきました。

a_report0627_03.jpg この日の講師は劇団青年座文芸部の千田恵子講師


千田講師は劇団所属のプロの劇作家・演出家として、日々の業務をされています。
今年はこのクラスの修了公演の演出を、千田講師にお願いしました。
修了公演とは、毎年3月末に新宿シアターサンモールで行われる、声優・俳優科の生徒たちが出演・制作をする舞台公演です。
千田講師から「その時期だけいきなりお芝居をやるというのは、基礎クラスの受講生にとってはとても難しいので、早い時期に一度お芝居の稽古をやりましょう!」という提案をいただき、カリキュラムを組みました。
今回、千田講師が準備してきた教材は、新見南吉の「ラムプの夜」‐学芸会のための一幕劇 という短い戯曲。


a_report0627_04.jpg 生徒たちは、この戯曲を数週間前に渡され、各班ごとにどうやって演じていくかという話し合いをしたそうです。
この日の授業が始まりました。

授業開始後、10分から15分間、各班でもう一度話し合って、どのように戯曲を読み解いたのかを、実際にお芝居の稽古をすることで千田講師に発表することになりました。

全部で3班です。

まず、A班からの発表です。 A班は台本には変更を加えずにやる、ということに決まりました。
まず、ホワイトボードに、窓や入口などの配置を書いて、立ち位置などの場所を決めていきます。そして、実際に稽古が始まりました。

この戯曲の主な登場人物は、姉と妹(場所はその姉妹の部屋)。
そこに、旅人がやってきたり、泥棒がやってきたり、子どもが訪ねてきたりするのです。

実際に演じてみて、この姉妹の人間関係をうまく出せていないという指摘がありました。
生徒同士は役作りについて話し合ってきているのですが、それが見ている人にうまく伝わってこないと。
また、旅人役を演じたの生徒に対しては、先週は全然ダメだったのに今週になってとてもよくなっている。1週間でこんなにうまくなるんだ、と千田講師も驚いていました。
しかしその「旅人」をどのように解釈するのか、ということをこの班でちゃんと決めないと、旅人の演技ができないとも言われました。
また、そもそも恥ずかしいと思って演じていると、いつまでたってもこの虚構の世界(お芝居の世界)に立つことができない。「恥ずかしさ」を拭いさって、仲間を信じて真剣に虚構の世界(お芝居の世界)を作ってくださいと指導されました。


続いてB班。
この日は、メンバーの欠席があり、1名欠けた状態で稽古が始まりました。
ランプの件で、「思い出してから」話すことがリアルであり、「喋りながら思い出す」ということはないよね、ということをお話されました。「思い出すこと」と「声に出して発する」ということは別の動きになるんですね。
思い出してから話すこと。それを指導されて、生徒がセリフを発すると、とてもリアルに見えて来て、観ていてとても興味深いお芝居になっていきました。
そのセリフはこんなセリフでした。

「あ、憶ひ出した。この前ラムプをつけるとき、まだユキ坊ちやんが生きてて、僕にマツチをすらしてくれつてせがんだわ。」


また、千田講師が何度も指摘していたのが、会話のシーンに「ちゃんと会話をしていますか?」ということです。会話は、「自分だけが声を出す」ということだけではないと。
a_report0627_02.jpg 会話の仕方として、会話のリズムをお姉さんの喋りに合わせてみるということもおっしゃっていました。お姉さんのセリフに合わせて、そこに向けて話してみる。映画監督の溝口健二監督が俳優にいつも「反射してください」ということを言われていた意味が、この日初めてわかったような気がしました。
悲しいからと言って悲しそうに言う必要はない。
まず、きちんと立って会話することが大切。目の前のテキストと、自分だけの中で完結していたら何も変わらないよ、ということを強調されていました。
相手の言葉に向かっていくということが、演じるときに実はとても大切なことである。相手に合わせて、そこでお芝居をすることが出来ると、息が合った魅力的な演技ができるのだと思いました。


最後にC班の稽古が始まりました。

この班は、具体的に効果音や小道具などを用意してきました。
PCから、風の音やベルの音などの効果音を流しながら演じていきます。
最初の方で、「姉妹の会話で、姉の発声の声量が妹と比べて負けている」という千田講師からの指摘がありました。そして、姉役がその部分を意識して修正するだけで、リアルな会話に見えてきたのです。 こういう経験を身体でリアルタイムで感じることで、俳優として、声優として成長できるのではないでしょうか?
また、旅人が入ってくるシーンでは、「どう身体を動かし配置していくのか?」ということを指摘されました。旅人には旅人の生活というものがあり、姉妹には姉妹の生活があるんだから、その生活の身体の動きを意識しましょうと。演技の経験の少ない場合は、演じながら発声すると動きが止まってしまいます。なるほどこれは僕は絶対にできません。

続いて、泥棒の登場のシーンの稽古。泥棒の動きが、千田講師の言葉を受け、みるみる活発になっていきましす。しかし同時に、会話のリズムが単調なのが気になるということもおっしゃっていました。登場人物の関係性が変わることによって、会話のリズムやテンポが変わるはずだと。そのためには戯曲を読み込んで、どこで登場人物の関係性が変わるのか?をよく考えることも大切であるという意見に、また「なるほど!」と思いました。
子どもが登場するシーンでは、舞台上のどの場所でセリフを言うのか?で話し合いになりました。
舞台のどこに立って、どのような間合いで、どのようなリズムでセリフを言わないといけないか。
つまり自分の身体をいくつかのパートに分けて、すべてをコントロールする(セリフ、間合い、動き、表情など)のです。これはとても大変なことです。
その技術は簡単には習得できないのだと、深く納得しました。
でもそれができるのが俳優の技術であり、その技術を身に付けることによって俳優としての基本ができ、同時に声優としての基礎も形作られるということが伝わってきた授業でした。

a_report0627_01.jpg 1か月後に千田講師の前で生徒たちが自ら練習した結果を発表します。
そのときまで、生徒たちは各自班に分かれて練習をします。練習の途中で、この日の千田講師の言葉が生徒たちにさらに深く伝わっていくのでしょう。 また千田講師は、「一人で動いているときに、他の俳優はそれにつられる必要はありません。」と言いました。「各自、その自立した役をきちんと演じれば、他の俳優につられて動き出すという演技にはならない筈だ」と。
これは、生徒たちがこの戯曲をどのように解釈してその役を演じるかという意味です。
その役をどう感じ、どう考えたかということを、俳優は身体と声を通じて表現する仕事なんだということが、この指導を通じてリアルに伝わってきました。

みんな、熱心に創作に取り組んでいます!
こうして見ていると声優も俳優も、考え感じながら、身体と頭脳でモノを創るという大変なクリエイターなんだということを実感しました。

最後に、基礎クラスの生徒たちに千田講師からメッセージをいただきました。
「基礎クラスの演技基礎では、作品に対する個々のイメージを、グループで共有し、それらを擦り合わせて一つの作品を創ることを目的としています。自立した俳優になるためには、それぞれが役・作品の世界観について考えるのは当然です。
しかし、作品はたくさんの人の化学反応で豊かになるもの。自分のアイディアだけに固執しないで他者の発想を受け入れる柔軟性も必要だからです。」