映像・広告クリエイター科

2013年 09月 01日

2013夏季特別短期セミナー『信也のまんま 2』レポートが追加されました。

夏季特別短期セミナー/『信也のまんま2』レポート


shinyanomanma2.jpg
映像テクノアカデミアの2013夏季短期特別セミナー

「信也のまんま 2」全3夜。

去年に引き続き、中島信也とゲストの対談方式。
今年はゲストに広告主を迎え、CM・業界の過去、現在、未来とリアルな現場のエピソードを語ります!


【第1夜】 8月20日 加藤 英夫(サントリー)× 中島信也(東北新社/CMディレクター)

mannma2013_001.jpg
加藤さんと中島信也CMディレクターとの付き合いは長い。1980年代後半から30年近く仕事が続いています。

サントリー角瓶で、鹿賀丈史が出演していた「旅情&ウイスキー」というCMが、初めての加藤さんと中島ディレクターとの出会いです。
それからずーっと長く仕事をご一緒している関係が続いています。
サントリーという、高いレベルでの広告表現のアウトプットが求められる企業をそれだけ続けられていることが、奇蹟とも思えるような関係性をも 築き上げていると言えましょう。いくつかの広告会社のCMプランナーたちと一緒になって、中島ディレクターは「サントリー」というクライアントのため、懸命になって、さまざまな表現で応えていきます。

加藤さんの言葉が印象に残っています。
ある時代までのサントリーは高杉治朗さんの演出に代表されるシャープで強いもの、そして東條忠義さんの演出に代表される、文学的で抒情性に富むものがありました。
そこに中島信也ディレクターが参入し、あらたなサントリーのコミュニケーションスタイルを築いてくれたとおっしゃっていました。
それは「楽しませ、人を幸せにすること」。 うまく言えませんが、スーパーホップス、CCレモン、伊右衛門茶、燃焼系アミノ式、などのCMを見ると、加藤さんのおっしゃっている意味が見えてくるのかもしれません。時代が変わると、その時代に応じた、新たなCMの文法が生まれてくるのでしょう。
加藤さんと中島信也ディレクターのもう一つの共通点は、学生時代から広告が好きだったということ。
加藤さんは学生時代、毎週の伊勢丹の新聞広告(土屋耕一さんの手になるコピー)を楽しみにされており、毎月発売される「家庭画報」の「キューピーマヨネーズ」の広告(秋山晶さんのコピー)を心待ちにされていたそうです。
一方、中島ディレクターは、中学の文化祭の舞台の幕間に流すラジオCM(※近所のお店)を作ったと話していました。
そして、この二人は広告の世界に入り、結果的にこうして長く仕事をする関係になったのでした。

加藤さんのお話を聞いていると「言葉」に対する感性が高く、その言葉が持つ世界観やレトリックなどに限りない愛情をもっていらっしゃるのだということがよくわかりました。加藤さんがサントリーに入社された初期の頃にお書きになった

「金曜日はワインを買う日」

の広告コピーはあの時代とても衝撃的な言葉でした。
こうした言葉で、ライフスタイルが大きく変わっていくだろうという示唆をも与えてくれるものでした。
ボディコピーもきちんと書かれており、文学的なリテラシーの高い広告表現が出来るのが、サントリーという会社でもあります。
それは、「寿屋宣伝部」時代(※寿屋=サントリーの旧社名)の開高健や山口瞳から延々と続く伝統なのでしょう。

サントリーで長く広告を手掛けられている加藤さんから、広告するための企業が注力するいくつかののポイントを教えていただきました。 一つは、まず

企業の哲学をよく理解し、それをきちんと伝えるということ

二つ目は創業者鳥井信治郎さんの言葉に代表される

「やってみなはれ、やらなわからしまへんで」

という言葉に代表されるチャレンジ精神みたいなものを理解すること。
そして三つめは、先ほどの開高健のコピーに代表される

「『人間』らしくやりたいナ、『人間』なんだからナ」

ということの本質的な価値を理解することだと思うのです。

これらはすべて、「サントリー」という会社の持つ企業文化(哲学=フィロソフィー)を理解して、その大きな骨格の上に立ってコミュニケーションをしましょう、ということなのではないでしょうか?
その企業文化を、広告を通じて好きになってくれる人が増えることになり、そこの商品や会社が好きになり、企業ブランドを愛してくれるようになってほしい。そのようなことを想ってサントリーはレベルの高いコミュニケーション活動をやり続けておられるのだと理解しました。

加藤さんが、こうしたコミュニケーションを一緒に行っているスタッフへのねぎらいの気持ちを、いつも持たれていることに感心しました。
懐が本当に深いというのは、こういうことを言うのだなと感じる一夜となりました。

【第2夜】 8月21日 ジョン・キム(すかいらーく)× 中島信也(東北新社/CMディレクター)

mannma2013_003.jpg
「信也のまんま2」今年の2回目は、すかいらーくのマーケティング執行役員のジョン・キムさん。

ジョンさんは、2012年に韓国のマクドナルドから、すかいらーくに転職。
ジョンさんがすかいらーくグループの広告コミュニケーションの責任者であり、ジョンさんがOKならばそのままOKということになるという。日本の企業に良くある、上申してお伺いを立て、さらに合議制で決めていくというスタイルとは真逆にあります。
それだけに決断が早く、そこにはジョンさんという人の個性や考え方も反映されることになります。実際にジョンさんがすかいらーくに来てからの 広告コミュニケーションは、大きく変わったらしい。

ジョンさんが2012年から始めたキャンペーンは、電通の田島CDのチームが中心となってプランニングが行われています。そしてその演出を行っているのが、「信也のまんま2」のホストである、中島信也。

最初、ジョンさんは中島ディレクターのことを知らなかったのですが、ショウリールを見、カップヌードルの「HUNGRY」のキャンペーンをやっていると知り、とても喜ばれたそうです。言葉がなくても通用するシンプルで力強いコミュニケーション。ああいう仕事は長く残り多くの人に伝わるんだなと改めて思いました。

この日はカップヌードル特別版として、過去のカップヌードル「HUNGRY」シリーズを10分程度にまとめたものを見ることができました。
ジョンさんがこの日おっしゃっていた言葉で、みなの中に残ったのが

「confidence(自信)」

というもの。

自信をもってクリエイティブを創るという、矜持みたいなものが必要であると何度もおっしゃっていました。その言葉について中島ディレクターがさらに突っ込んで質問すると、
confidence(自信)は、きちんとしたtalent(才能)とexperience(経験)が組み合わさって生まれるものだ!
とジョンさんは語ります。
才能だけでも経験だけでもなく、その二つがきちんと掛け算されて、その合計が自信の大きさにつながる、という言葉は広告コミュニケーションの仕事を超えて、人間的な魅力に満ち溢れたものでした。

またアンケートの中で、ある女性PM(プロダクションマネージャー)の言葉がとても印象に残りました。
彼女自身、大学で授業が面白いと思ったことはなかったらしいのです。大学卒業後、こうして学ぶという体験が数年ぶりにできました。今回のこの話を聞いて、学ぶということの面白さを再発見できました。そして、CM制作会社に入社した時の、「CM創りで人の気持ちを動かしたい」という初心に戻れたのがとてもよかったという言葉でした。私たちもとても嬉しい気持ちになりました。

また、ジョンさんが語る広告とアートとの関係についてもとても興味深いものでした。
広告とアートはとても似ている。似ているが、広告はそのあと商品やブランドを売り、アートはアートそのものを売る。違いは実はそこだけなんだという考えです。

ジョンさんはもともと大学で哲学を学んでおられたので、こうして本質に立ち返って物事を考えるということを実行されてる方なんだなということがよくわかりました。

ナイスガイのジョンさんとむちゃむちゃ面白トークの中島信也との対談。通訳の渡辺さんの協力もあり、とても内容の濃い90分となりました。

【第3夜】 8月22日 岡本善勝(資生堂)× 中島信也(東北新社/CMディレクター)

mannma2013_002.jpg
「信也のまんま」今年最後のゲストは資生堂の 岡本善勝さん。
岡本さんは福岡の久留米のお生まれで、実家は京都の呉服商です。

大学を選ぶときに美術系か工学系に行こうか迷っていると、自宅から通える九州芸工大(現・九州大学 芸術学部)の存在を美術の先生から教えてもらったそうです。その大学の授業の中で、当時資生堂の宣伝部長だった中村誠さんの集中講義があり、広告業界と資生堂に魅力を感じ、めでたく1980年に資生堂宣伝部に入社されました。
それからデザイナーとして働きはじめ、セルジュ・ルタンスと同じパリ・オフィスに駐在して、海外向けの広告をセルジュ・ルタンスとともに手がけられました。
その後、ブランドのクリエイティブディレクターとなり、化粧惑星、マジョリカマジョルカ、HAKUなどのブランドを担当されました。

中島信也ディレクターとの出会いは、資生堂宣伝部の奇人と呼ばれている八村邦夫、石塚靖男の紹介だったそうです。
その後岡本さんは1999年から2002年まで、ACCの審査員をされました。
このとき、中島信也ディレクターと一緒に何日も審査をすることで親しくなり、一緒にする仕事も増えていったようです。

二人が一緒にやった仕事でいちばん好きなCMを岡本さんに選んでいただきました。
ひとつは熊木杏里が歌い、マイコが演じる、資生堂企業CM「新しいわたしになって」。
歌詞を中島信也が書き自ら企画・演出したもの。中島ディレクターはこの企画を東北芸工大に向かう新幹線の中で思いついたそうです。

「本日わたしは、ふられました、わかっちゃいたけど、無理めだと...。」

という言葉がふっと降りてきたそうです。

このフィルムは今もとても素晴らしく、何度も何度も見てみたいという気になるものでした。

そして、もう一つが「化粧惑星」。この立ち上がりのシリーズは今見てもチカラがあり、特に工藤静香の「びつくりしました」と 「つ」を強調する手法はとても印象に残っています。

また、岡本さんが手がけられたブランド、「マジョリカマジョルカ」のTVCMやセルジュ・ルタンスとともにつくったインウイのCMを見ることができました。

被災された方々にエールを送るという意味を込めて、震災の翌年2012年4月8日、資生堂の140周年の事業として「化粧のちから」のTVCMが作られました。
演出をしたのは中島信也ディレクターです。
蒼井優が出演しているこのCMには、実際に被災された方々の写真が使われています。

どんな状況になってもお化粧をしたい、きれいでいたい、ということは善く生きようとすることだ!というメッセージが強く伝わってくるCMでした。
また、この日番外編として岡本さんの先輩の作品「資生堂オーデコロン モア」のCMを見ました。パラゴンの創設者でありカメラマンの横須賀功光さんの仕事です。これを見た中島ディレクターが、実験精神にあふれなかなかええですねえ!と感心していました。
また、2人の出身が九州は福岡の久留米と八女ということもあり、印象に残った他社のCMとして、「九州新幹線全線開業」のフルバージョンを見せていただきました。このCMも2011年、3・11とちょうど同じ時期に放送され、3・12開業という予定だったのですが、震災の影響で放送が中止になってしまい、その後ユーチューブなどで爆発的にヒットしたという伝説的なCMとなりました。

岡本さんが最後にこの仕事についてを語ります。
良く先輩に言われたのが、天才でなくてもいいが天才とつきあえなくちゃいけない、というもの。
特に資生堂宣伝部は直接、CM制作会社と一緒に仕事をしてきたという伝統があり、宣伝担当がCMディレクターたちとガチンコで向き合いながらCMを創ることが求められてきました。
クリエイターと面と向かってコミュニケーションをとっていく、という経験を通じて、さらに大きな人間に成長していくのでしょう。それを実行してきた伝統的な文化が、資生堂の宣伝部にはあるのだと思います。

中島ディレクターの言葉に

「創造力」と「想像力」が大切なんだ!

というものがあります。特に後の「想像力」とは お客様はどう思うのだろうか?
スタッフはどう思うのか?
という思いやりの気持ちを持ち深く考え続けようという言葉です。これは簡単ではありません。そしてお客様に媚びるということでもありません。

考え抜くということを通じて、人のキモチに寄り添うことが出来なければクリエイティブではない、という言葉は会場のみんなの心の中に響いたことでしょう。

岡本さんは、現在CSR環境企画室というところに在籍され、企業と社会をいかにして持続可能(サステイナブル)にしていくのか?ということを考え続けていらっしゃいます。言い換えると、地球と人間と、それに関する企業はどこに向かっていけばいいのか?というようなことです。
それは、わたしたちのライフスタイルを変えることであり、その提案がこれからの企業には求められるのだ、というお言葉をうかがいました。

そうして、あたたかい熱気に包まれたまま、三夜続いた「信也のまんま2」は終わりました。
また、来年もやりたいと思いますので、みなさん是非、見にいらしてください。

【 『信也のまんま2』レポート 】映像編集や広告制作にご興味のあるみなさま
映像テクノアカデミアの映像・広告クリエイター科では、CMプランナーや映像編集のプロを目指す方のために、基礎から応用レベルまで現役のクリエイターが丁寧に指導いたします。また、東北新社グループでのアルバイトのご案内や、就職サポートも充実。実際の制作現場でCMプランナーや映像編集が学べます。