映像翻訳科

2015年 02月 26日

授業レポート:「脚本、書いてみませんか?」

映像翻訳科では、通常の授業のほかに選択授業としていくつか講座がありますが、今回はその一つである「好きな回だけ選べる特別教養講座」をレポートします。
この講座は在校生、卒業生なら誰でも受講可能。 
映画の中の武器・弾薬、アメリカの政治・人種・ジェンダー、映画製作の現場など、映画のストーリーではない部分であるが、知らないと翻訳できない専門用語、文化的常識、社会事情、教育制度などを学ぶ授業を選択できます。

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今回はそのなかで「脚本、書いてみませんか?」の授業に出席しました。

シーンの意図を掴むには作り手の気持ちになってみるのが一番。生きた会話を訳すヒントになるのではないかということで、脚本家の西田直子さんを講師にお招きしました。
西田講師は実は映像翻訳科の1期生です。映像翻訳科の尾形由美講師や赤池ひろみ講師と同期でいらっしゃいます。
当時もこのような脚本の授業があり、その講師であった脚本家・荒井晴彦氏に師事。下積み時代を経て、現在テレビドラマや映画の脚本家として活躍されています。

映像翻訳者として英語力はもちろん、日本語力の必要性を痛感しているであろう学生たちに、まずは事前課題として「別れ、もしくは出会い」のワンシーンシナリオを書くことが出されました。事前に西田講師に提出し、今日はその講評の授業でもあります。26名の生徒が提出しました。

表紙、登場人物の説明、梗概(あらすじ)、本編と、体裁は普段、吹替翻訳の授業でも勉強しているのでしっかりつけている学生たちも多い。しかし、話の展開はさまざま。3ページほどの短編から、15ページにわたる長編まであります。
今日はそのなかで6名の脚本を取り上げ、全員で読んでみて、講評します。

早速西田講師から、シナリオを書いた学生に内容についてどんどん質問が飛びます。
たとえば、旅行の帰りの遠距離恋愛カップルが、東京からの帰りの新幹線で別れるシーンを描いた作品。

「この二人は付き合って何年ですか?」
「この旅行は記念日的なものですか?」
「先に新幹線を降りる彼女は名古屋に住んでますね。彼はどこに住んでますか?」
「この二人はうまくいってますか?結婚は考えてますか?」
「この二人が抱えている問題はありますか?」
「二人の意識にズレはありますか?」

登場人物の設定を、そこまで深くは考えていなかったこのシナリオの作者も、質問に考えながら答えることで、話の背景が見えてきます。そこで見えてくる、二人の間にある問題や気持ちのゆらぎを前面に出すことで、ドラマが生まれてきます。
たとえば、彼女の浮かない表情から話が始まれば、彼女側にある不満や不安が読み取れるなど、構成にも変化をつけられます。
まずは登場人物を掘り下げる。キャラクターに肉付けしていくことで、どんどんシナリオが色づけされて、立体的な話になることを実感しました。


シナリオには、話を展開にもっていく"ひっぱり"、その後の展開の中での"驚き"、"葛藤"、そしてどうするのかという行動、というポイントが必要になると、それはどれにあたるのか?という質問が各シナリオに対してされました。
授業内には6名以外の全員の作品についても一言づつ質問と講評をしてくださり、授業は終わりました。


作品を取り上げられた学生に聞いてみると、
「自分なりに掘り下げたり、原稿を推敲してみたつもりでしたが、指摘されるとしどろもどろになってしまいました。多角的な視点で客観的にみなくてはいけないんだなと、大変勉強になりました。帰ってから、指摘された点を参考にもう一度書きたいです」と意欲を見せていました。

最後に西田講師の言葉です。

「初めて書いた学生も多い中で、質問攻めにあい、いろいろ言われて驚いたと思います。
脚本家とは、いろんな人にいろんなことを言われて、延々原稿の直しをしていく職業です。物語を膨らませていく直し、予算や事情によっての理不尽な直し、はたまた現場でセリフが変わることもあります。
けれど大変なのは脚本家だけでなく、監督も、照明も、美術も、撮影も、録音もプロデューサーも、自分の仕事を精一杯やることでドラマや映画がつくられています。役者さんは言うまでもありません。

それは日本だけでなく世界中どこでも同じで、映像作品というのはプロが力を結集させてつくったもの。字幕でも吹替でも、翻訳者というのはその作品の制作スタッフの代表といっていいと思います。
私も自分の作品を海外の映画祭に出すときに、このニュアンスを正確に英文字幕にしてもらえるのか?ととても心配でした。皆さんが翻訳する作品のスタッフも、同じ思いだと思います。ちゃんと正しく日本語訳してもらえているか、気になると思います。
そんな制作側の気持ちを知ったうえで、翻訳してもらえると、とてもうれしく思います。」


今後も内容を変えつつ、講座は開催していきます。ご興味あるかたは参加してみてください。