映像翻訳科

2015年 05月 26日

授業レポート:「吹替翻訳の授業の中身①」

映像翻訳の世界で、近年特に需要が高まっている吹替翻訳。
映像テクノアカデミアは、皆さんご存知の通り、映像制作会社の東北新社が運営しています。
「制作会社の運営」の利点を生かした2年目の研修クラスの授業を、3回連続でレポートしたいと思います。


IMG_1564.JPG 声優・俳優科の学科主任でもある佐藤宏樹講師は、「LEVERAGE~詐欺師たちの流儀~」などの人気シリーズを手掛ける現役の吹替ディレクター。ひと言でいうと、翻訳者が仕上げてきた原稿をもとに、スタジオで声優に演技をつけるのが吹替ディレクターの仕事。
でもそれだけではない。

授業では、「吹替ディレクターとは」という役割や仕事の内容についての解説から、「吹替版制作における"翻訳"の重要性」、ディレクターから見てどんな翻訳を上げてもらいたいか、どのような素養が大切か、について進んでいきます。

実際に起きた事例や、今、変わってきている最近の傾向についてなど、現役ディレクターでないと聞けない話のオンパレード。みんなレジュメを参考にしながら、真剣に聞いています。


そして、吹替翻訳をやったことがある人なら誰もが挙げる、難しいポイントの1つとして「尺合わせについて」へと話題は進んできます。みなさん聞いたことありますか?

「尺合わせ」とは、映像の中の役者の口の動きにあわせて日本語のセリフをつくること。つまり、映像にあわせて日本語でセリフを言いながら、セリフの長さ、内容を確認する作業なのです。

セリフが短ければ、映像では口の動きだけがパクパク残ってしまい、セリフが長すぎると、口が閉じているのに日本語が聞こえることになってしまい、吹替版として成り立たないのです。
これだけ細かく説明できるのは、翻訳の内容を客観的に見られる演出の目を持った人だからこそ。
大概、一人でセリフの尺を合わせていると早口になってしまい、尺が長すぎることが多いのです。
今まで、モゴモゴと、単調に尺合わせをしていた人は、来週からは大きな声で、気持ちを込めて、尺合わせをしだすのではないかと思います。

話は「吹替翻訳原稿を作る上で」と実際の原稿を作成するときの注意事項に。確かに吹替って原稿作成で迷うことが多いですよね。うん、うん、納得。今までモヤモヤしていたことが、ディレクターに言ってもらえると、まさに「腑に落ちる」。
次々回は、プロの声優の人にみんなの原稿を読んでもらって、佐藤ディレクターからコメントをもらえるという「アフレコ実習」の授業があります。 恥ずかしいだなんて言ってられない。自分が書いた原稿を声優の人に読んでもらうと、まったく別物に聞こえる。早くもその体験ができるのです.

そして夏の声優・俳優科との「コラボ授業」についても触れていきます。 この授業は、映像翻訳科の学生が翻訳したものを、声優・俳優科の学生と協力して、日本語吹替版作品に仕上げていという特別課外授業です。
最後はスタジオで収録をするという、まさに「プロの翻訳者」を体験するような授業。毎年この授業を受けた学生から、「吹替翻訳の難しさや、楽しさ」が「分かった」と大好評の名物授業なのです。
この授業も、収録スタジオを持った制作会社だからこそできる授業。この学校を選んで正解だったと実感できるはずです。

(→コラボ授業の詳細はこちら

後半はプロの翻訳者が上げてきた原稿を例に挙げながら、「あるべき原稿(台本)」の解説。

今まで部分的にしか翻訳をしていないみんなにとっては、他人ごとに感じるかもしれない「梗概」についても解説から始まり、実際、佐藤ディレクターが翻訳者から上がってきた原稿をどう修正したか、そしてその理由。

自分が作成した原稿を第三者的な視点から見るのは、字幕においても吹替においても、難しい作業。でも実際の映像を見ながら、ポイントを説明してもらえると分かりやすい。

大きな修正、小さな修正。尺に合わせるための修正。表現がダブるための修正。演技のしやすさのための修正。クライアントと相談して意訳した修正。いろんな修正があるのにビックリ。

「英語と合っている」だけではだめなんです。

翻訳は一人でする作業。でも翻訳者の狭くなりがちな視点を、ディレクターがいつもチェックをしてくれるなんで、とても心強い。みんなの頑張る気持ちに、新たな火がついたようだ。


来週は東北新社 外画制作事業部 翻訳室に勤務する、川又勝利講師による「演習」の授業をレポートします。