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【No.5】「レッド・ライト」を翻訳して

長澤 達也 2003年3月 映画翻訳専科卒業
(株)東北新社 外画制作事業部 演出部字幕課
【 作 品 歴 】
字幕翻訳
「ディヴァイド」(劇場)
「フットルース 夢に向かって」「ビューティフルメモリー」「ストリップ★アカデミー」
「小さな恋のものがたり」「ミッドナイト25時/殺しの訪問者」(DVD)
字幕演出
「アイアン・スカイ」「デッド・サイレンス」「俺たちフィギュアスケーター」(劇場)

「ゲーム・オブ・スローンズ」「glee 踊る♪合唱部!?」「LOST」「ALCATRAZ/アルカトラズ」 「アメリカン・ヒーロー」(放送/DVD)


今回の映画の翻訳者は長澤達也さん。
映像テクノアカデミアの卒業生でもあり、現在は東北新社の外画制作事業部 演出部字幕課で、字幕翻訳の演出をされています。しかも演出の仕事だけでなく、翻訳もこなしています。
今回は2月15日に公開された「レッド・ライト」について伺います。
※多少のネタバレを含みますのでご注意ください。


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©2011 VERSUS PRODUCCIONES
CINEMATOGRAFICAS S.L.(NOSTROMO PICTURES)
/ VS ENTERTAINMENT LLC
「レッド・ライト」

伝説の超能力者サイモン・シルバーが仕掛ける、新感覚の[謎解き]へようこそ。


シチュエーション・スリラー『リミット』で2010年サンダンス映画祭に旋風を巻き起こし、世界中のボックスオフィスを席巻させた奇才ロドリゴ・コルテス。 彼が次にメガホンをとったのは、ロバート・デ・ニーロ、キリアン・マーフィー、シガーニー・ウィーバー、エリザベス・オルセンら現代ハリウッドを代表する名優陣を起用した新感覚の謎解き映画!


30年間の沈黙を破り突如姿を現した伝説の超能力者サイモン・シルバーと、超常現象を暴こうとする科学者チームの息詰まる攻防戦。そこには台詞、仕草、さらに緻密に計算された構成のそれぞれが、観るものに認識のズレやミスリードといった"脳の錯覚"を引き起こさせるトラップとなり散りばめられている。果たして、サイモン・シルバーの復活に隠された、真っ赤な嘘と真実とは一体何なのか。あなたの脳が、試される。

■ストーリー
科学者のマーガレット・マシスンとトム・バックリーは、超常現象を科学の力で解き明かすため、研究を重ねる日々を送っていた。そんな折、30年前に引退した伝説の超能力者サイモン・シルバーが復帰するというニュースが話題をさらう。実は以前、マーガレットはシルバーに挑み、癒えることのない傷を負ったという過去を持っていた。それを知ったトムは、全てを解き明かすため、単独でシルバーのショーに乗り込むことを決意する・・・。



インタビュアー(以下「I」と省略):劇場版の翻訳は今回がはじめてですか?

 長澤:2本目です。1本目は「ディヴァイド」という作品で、2012年11月にDVDがでました。地下のシェルターに閉じ込められるパニックものです。



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I:とてもセリフが多かったように感じましたが、どれくらいあったんですか?

 長澤:113分の映画で1200枚ありました。
劇場版にしては長めに1枚1枚の尺(長さ)をとりました。ちょっと読ませる字幕になってしまいましたが、意味が難しいこともあって・・・・






I:こんな考えさせられる映画、めずらしいですね。裏の裏まで読まないといけない。。

 長澤:だからこそ、大物俳優たちがオファーを受けてくれたのかな、とも考えられますよ。



I:前回翻訳された「ディヴァイド」が、映画「シャイニング」に近い正気を失っていく話だとすると、今回は超常現象の話ですね。

 長澤:そうですね。内容的に超常現象が研究の対象でもあったので、説明的なセリフがたくさんありました。



I:特に超常現象にまつわる話だから、気をつけたことはありますか?

長澤:今回は、専門的な超能力関係の言葉をできるだけ調べて、難しすぎず、かつ雰囲気の伝わる言葉を選ぶように心がけました。



I:博士たちの会話に使われている専門用語はそれらしくなってるなあと感心しましたよ。
たとえば私も知らない言葉、「Exact Science 」=精密科学《数学・物理学など定量的な科学》が出てきたのでなんだろうと調べました。勉強になりました(笑)。あとは機械の名称だったり、心理学的な用語が物語の雰囲気をかもし出してるように感じました。

長澤:それらしくなってましたか(笑)。よかったです(笑)文系なので、理系の人達の中ではあたりまえだったりする前提を知らないので苦労しました。



I:特にパネル・ディスカッションのシーンでまくし立てるところなんかは、わざとなんだろうけど、難しい言葉を選んでましたね。

長澤:そうなんですよ(笑)言葉を選ぶのが大変でした。英語に該当する日本語を、くだいてしまっていいのか、難しい専門用語のまま出したほうがいいのかと。あんまりむずかしくても意味がわからなくなるし、やさしくても雰囲気が出ないからです。



I:ほかにも、この作品だからこその、脚本というかセリフ回しに関しての特徴や、そのために苦労したことはあったんですか?

長澤:最後まで英語をよく聞かないと、どっちの方向性にいくのかを判断が難しい作品でもありました。
全体的に長いセリフが多いのもあるのですが、最後まで聞いて初めて、この人はこっちに話をもっていきたかったんだ、というセリフが多かったですね、特にマシスン博士(シガーニー・ウィーバー)のセリフが。




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©2011 VERSUS PRODUCCIONES
CINEMATOGRAFICAS S.L. (NOSTROMO PICTURES)
/ VS ENTERTAINMENT LLC
I:そうなんですか。そんなときの対応は?

長澤:実はセリフの始まりも同じで、どこからこの話をもってきたかもよくわからないこともあったんです、、、
だからこそ極力、シンプルに、英語に忠実に訳すよう心がけました。後になってから、こっちかな?と修正をすることもありましたが。




I:監督も、わざとこういうつくりにしたのかな、という感じですね。

長澤:見てる人に不安を与えるというと大げさですが、どっしり構えてみてれば話がわかる作品ではなく、え?どうなるの?って思うつくりになっていると思います。
だからこそ、英語でも曖昧なところは、そのまま曖昧にというか、セリフの方向性を明確に出さずに、英語に沿った形にしました。




I:それで正解だと思います。特にこの「レッド・ライト」のような内容で、翻訳者の解釈を前面に押し出されても「観客だって自分の頭で考えるよ!」と思いますもん!(笑)

長澤:そうですね。セリフの中で、話が飛んでるならそのまま飛ばして、というように訳しました。



I:内容に入りますが、たとえば最初のシーン。超常現象があるから引っ越したいうんぬんという家族の話がありますね。
結局女の子が犯人だったというくだりも、あまりに説明がなくて、いつわかったんだろう?と見返してしまったんだけど、あれもそのまま訳したんですよね?

長澤:もちろんです。その後のトリックの話で、いろいろな現象の説明がつく、という前提での理解でしょうね。丁寧な説明ではないけど、実はいろんなところに伏線はある、という設定ですね。



I:そう、丁寧ではない!特に調べてもいない様子で、次のシーンでは女の子と博士が会話をしている。そこであなたが犯人ね?という指摘がある。観ている者にはどうしてわかったんだろう?という疑問が残る。いろんなことをすっとばしてます!

長澤:博士がいろんなところへフィールドワークらしく調査に走りまわっているから、だいたいの手口の見当はつくということだと思いますが・・・・



I:最後のどんでん返しにしても、途中で真相をはっきり言っているセリフがあったりして・・・

長澤:実はこの映画を2度見るとそれがよくわかるんですけどね。1度目はストーリーを追っていっちゃうので、気が付かないんです。



I:サイモン・シルバー(ロバート・デ・ニーロ)も、途中で何回もサングラスをはずしてるんですよね!

長澤: そう、不自然な動きはしてるんです。ヒントは結構ちりばめられているんですけどね〜



I:まったく振り回されつつ見ることになりました(笑)
冒頭にもおっしゃっていましたが、本当に出演者が豪華ですね。ロバート・デ・ニーロに、シガーニー・ウィーバー、トム役も「インセプション」にでてるキリアン・マーフィー。それぞれのキャラクターの役割ははっきりしてますね。

長澤:はい、それはそうですね。



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I:キャラクター別に、セリフの訳し方を変える、ということはしましたか?

長澤:うーん...。たとえばマシスン博士は、博士らしく、難しい言葉を入れたほうがいいかなとかはしました。口調とかは特に変えたりはしていないですが。



I:この映画のなかで、マシスン博士の役割ってなんなんでしょう?

長澤: 単純に言ってしまえば、この映画は嘘つきな人と、それを暴く人。という構図なのだけど、博士が抱えている生と死の問題であったり、心の弱い部分をつかれ、自分を疑ったりする心の深い部分の闇は、彼女がすべて背負っている気がしました。
超常現象を信じたいのは、死後の世界というか、死んだ後にもきっとなにかあるという気持ちがあるからではないか、というセリフもありましたが、彼女の実生活との葛藤が現れていますね。自分だって信じたいところはあるが、利用するものがいる限り、暴いていかねばならない・・・・・




I:最後まで見て映画の中の超常現象は、どこまで仕掛けでどこまでが本物なんだ?とすごく混乱しますね。あれは?あれは?と、ここでも質問大会になりそうで(笑)

ただこれだけは聞いてみたい!エンドクレジット後の部屋の窓。あの意味は?

長澤:トムの部屋の窓ですよね。前のシーンにもあったと思います。風にたなびいているカーテンというところからして、平穏=Peaceなのかな。
この部屋は、自分と、受け入れたくないもう一人の自分が向き合う場所とも解釈できる。その部屋の窓だから、ここから抜け出して新しい世界へ、という意味もあるのかと思います。




I:翻訳者としては、作品の方向性はどっちだと解釈したんですか?ホラーなのか、トムの自分探しなのか。

長澤:自分探しでしょうね。でもその辺の観客を惑わすための伏線は、そのまま訳した感じです。




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I:話を変えますが、以前放送用で映画「ポルターガイスト」を翻訳してましたよね?

長澤:あ~近いですね。言葉遣いとか似ているかも。



I:「ポルターガイスト」は筋は難しくないですよね?だけどこの映画は、2度観ないと分かりにくいところがありますよね。

長澤:自分探しとはいえ、どこまで観客を惑わし続けられるかが勝負の映画だと思うんです。で、2度目見たときに、ああ、こんなにもヒントがちりばめられていたんだ!と思わせる楽しさがある!



I:結構、玄人向けの映画ってことかな。

長澤:そうですね。最後まで見ると、落ち着くところに落ち着く。観れば観るほど深さがでてくる。
特にシルバーの実態がわかってくると、それとは対照的に、本当に力を持った人は孤独と常に戦っている。ただそのようなことが、一度見てストレートに理解するのは難しい映画ではあるかもしれないです。




I:シルバーを見ていると、まるでマジシャンの手品を見てるようで。長澤さんは、こういうサイキックの存在を信じます?

長澤:そうなんだ、と受け入れるのみです(笑)



I:日々の仕事では、字幕演出と翻訳とどちらもする立場で、住み分けというのはあるのですか?

長澤:字幕演出は、すでにモノ(翻訳)が出来上がった状態で目の前にあります。それをみて、あーでもないこーでもないという作業なんです。翻訳は、何もないところからのスタートなので、主観も入るし、もし間違ったら間違った方向にずっと行ってしまうという緊張感がありますね。 字幕演出のほうが間違いに気付きやすく、客観的になれます。翻訳は逆なので、いつも気をつけています



I:どちらもやることで、どちらにもプラスになることってありますか?

長澤:演出していると、「これは違う」と、翻訳者さんの意図をあまり考えないで間違いを指摘しがちになります。だけど一回自分で翻訳も経験すると、一応いろいろ考えてやっているので(笑)、翻訳者さんも考えて考えてこういう訳になったのかな?と思い至れるようになってきましたね。



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I:つまり表面的なものじゃなくて、意図を汲み取れるようになったということ?

長澤:まだ完璧ではないかもしれないですけど、意図を汲み取ろうと努力しています。
その意図のバリエーションが、こう考えたのかもしれない、こう考えたのかもしれない、とたくさん増えました。




I:こうして伺うと、長澤さんの翻訳は、主観+俯瞰をバランスよく配合されてるということなんですね。

長澤:たくさんの翻訳者さんたちのすばらしい翻訳を10年間字幕演出としてみてきたので、"良い翻訳"の基準は自分の中にあるとは思いますね。やはり大事なのは、『英語によりそう』ことだと思ってます。



I:そんな長澤さんの、この作品のなかでの自信作のセリフは?

長澤:そんなのないですよ(笑)恐れ多いです。
ただ、いつもあまりドラマチックにすることを目標にしてなくて、とにかく英語の意味をシンプルに、流れるように訳して字幕として出すのが目標です。逆に力みすぎて、目立ったセリフがあるのは、翻訳者としてはやってはいけないことかと...。
この映画では特に、シンプルに、素直に訳すことが必要であると思ったので実行したつもりです。観客の方に、「レッド・ライト」の世界観をそのまま楽しんでいただければいちばんうれしいです。。。。。




I:確かに翻訳者は、脚本家や監督が練りに練って作り上げた台詞を、確実に観客に伝えるのが仕事ですからね。


大学の商学部卒業後、当時映画を字幕でよく見ていたので、手に職をつけようと映像テクノアカデミアに入学。パン屋で働きながら、英語は大学で単位を落としたほど苦手だった長澤さん。
それでも今があるのは「不純な動機だけど、専科の時に先生に褒められたので続けられました。」とのこと。いいんです、動機はどうでも。今や字幕課のなかでも大きな柱となりつつある長澤さん。次の翻訳作品を見るのが楽しみです。


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レッド・ライト
RED LIGHTS

2013年2月15日(金)より全国ロードショー
■キャスト: キリアン・マーフィー、シガニー・ウィーバー、ロバート・デ・ニーロ

■監督/脚本/編集/製作: ロドリゴ・コルテス

■第25回東京国際映画祭 特別招待作品

■制作年: 2012年
■製作国: スペイン・アメリカ
■カラー/スコープサイズ/5.1ch/113分
■字幕翻訳: 長澤達也

■公式HP: www.red-light.jp
■公式Twitter: @RedLight_jp
■公式Facebook: www.facebook.com/redlightfilm.jp

【【No.5】「レッド・ライト」を翻訳して】映像翻訳(字幕翻訳・吹替翻訳)にご興味のあるみなさま
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