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【No.9】「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」を翻訳して

李 静華 2006年3月 映画翻訳専科卒業
(株)東北新社 外画制作事業部 翻訳室
代表作/[劇場字幕]…「俺たちフィギュアスケーター」 [劇場吹替]…「ミスターGO!」「大恐竜時代タルボサウルス vs ティラノサウルス」 [吹替]…「ドクターハウス」「FRINGE/フリンジ」「フォーリング スカイズ」「メンタリスト」



©2015 Trumbo Productions, LLC. ALL RIGHTS RESERVED


「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」あらすじ

第二次世界大戦後、赤狩りが猛威をふるうアメリカ。その理不尽な弾圧はハリウッドにもおよび、売れっ子脚本家トランボは議会での証言を拒んだという理由で投獄されてしまう。やがて出所し、最愛の家族のもとに戻るトランボだったが、すでにハリウッドでのキャリアを絶たれた彼には仕事がなかった。しかし友人にこっそり脚本を託した『ローマの休日』に続き、偽名で書いた別の作品でもアカデミー賞に輝いたトランボは、再起への道を力強く歩み出すのだった......。


インタビュアー(以下「I」と省略):『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』のお話をうかがいます。キャッチコピーが"『ローマの休日』を生み出した脚本家の真実の物語"とのことですが、どのような内容でしょうか?

李:舞台は、第二次大戦後のアメリカ。(主人公の)トランボはすでに売れっ子脚本家の共産党員でした。ソ連との冷戦時代に突入し、共産主義者への風当たりが厳しく、いわゆる"赤狩り"が始まりました。その"赤狩り"はハリウッドにも及んで、共産党員だった脚本家や映画監督が"ハリウッド・テン"と呼ばれてブラックリストに入れられてしまうんです。(トランボ自身も)公聴会に呼ばれ追及されるわけなんですが、彼はそこで証言をせずに、侮辱罪に問われ投獄されてしまいます。公聴会前後は、トランボの名では仕事ができなくなってしまうんですが、彼は決して屈せず、友人の名前を借り代わりに『ローマの休日』を(スタジオに)売ってもらったり、偽名を使ってB級映画やのちにアカデミー賞を取った『黒い牡牛』の脚本を書いたりと名作を生み続けます。最終的には彼の才能と熱意が認められて『スパルタカス』という作品で「ダルトン・トランボ」という本名がクレジットされ、ハリウッドの表舞台に戻ってくるという、自分の信念を貫き通した脚本家の半生を描いた作品です。



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I:ダルトン・トランボを演じたブライアン・クランストンが、「第88回 アカデミー賞」と「第73回 ゴールデングローブ賞」の主演男優賞に、ヘレン・ミレンが「第73回 ゴールデングローブ賞」の助演女優賞にノミネートされ話題となりました。惜しくも受賞は逃しましたが、ノミネートされたときはどんな気持ちでしたか?

李:とてもうれしかったですね。ブライアン・クランストンは『ブレイキング・バッド」という作品を見ていたので、マッドサイエンティストっぽいストイックな感じが、(本作と)業種は違いますが通じる部分もあって、何とか受賞してほしかったんですが、難しかったですね。ゴールデングローブ賞の助演女優にノミネートされたヘレン・ミレンも、素晴らしく嫌味な役で、存在感が抜群でしたね。



I:劇中には『ローマの休日』『黒い牡牛』『スパルタカス』ダルトン・トランボ脚本の往年の名作が多数出てきますが、気を付けたことはありますか?

李:『ローマの休日』と『スパルタカス』はもちろん見たことがありますが、さすがにセリフは覚えてないですし、他の人が翻訳したセリフは、そのまま使えないので、自分のオリジナルです。映画を見るときは最初から最後まで通して見ますが、本編中は1部抜粋したシーンなので、その中だけで分かるような字幕にしないといけないので工夫しました。また、『ローマの休日』だったら王女様とか、『スパルタカス』だったらこういった話し方とか、時代背景やキャラクターを考えながら翻訳しました。
この映画の中でセリフが出てこなかった『黒い牡牛』は、ビデオにもなくて、今度スターチャンネルで放送されるので見ようと思っています。



I:本作の字幕翻訳で苦労した点などはありましたか?

李:尺が120分以上(124分)あるので長かったですし、セリフも多くって...。架空の話ではなく実際の話なので、裏取りとかしながらの作業だったので、限られた時間の中で大変だったんですけども、勉強にもなってとても楽しかったです。
実在の人物のお話ではなく、半生を描いた伝記映画ということになっているんですが、ドキュメンタリーではないので、(字幕というのはもともと100%を出すことはできませんが)言っていることを確実になるべく情報を盛り込んで知ってもらうというのではなくて、ドラマなので見ている人に楽しんでもらわなければならないんです。だから、冒頭のテロップなどもなるべく分かりやすく、いかに見ている人がドラマの中に入れるかを考えて、字数制限もあるので、どの情報を出して、どの情報を割愛してというのが大変というか、難しかったというか、熟考して翻訳した部分です。



I:限られた時間って、どれくらいだったんですか?

李:他の作業と同時進行していたので、この作品にかけた時間は1週間もなかったです。シリーズものも並行して作業していましたし、そうだこの時、アカデミアの専科の吹替クラスを毎週教えていたんですよ(笑)。
いつも思っているんですが、「やれば終わる!」。「あー時間がない!」なんて思っている時間があったら、1枚でも多く訳す。「やれば終わるから」と思いながらいつもやっています。




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I:本作の翻訳の見どころを教えてください。

李:見どころはたくさんあるんですけれども、脚本家が主人公なので、議会での証言やインタビュー時の記者への返答など、セリフがウィットに飛んでいるので、そのやり取りは、必見です!
共産主義というだけで不当に弾圧され、議会に呼ばれ投獄され、最後は信念を貫いて脚本家として脚光を浴びましたけれども、その中で家族も犠牲になったり、命を落とした人だったり、裏切ることで友達を失ったり、地位を失ったり、仕事を失ったりした人がたくさんいて。
個人的な意見ですけど、今の世の中は、信仰の自由、発言の自由、不当な弾圧など、自分と違う人に対する圧力というか、人に対して寛容さがなくなってきているように感じるので、今の世の中でも共通するテーマではないのかなと思っています。ぜひたくさんの方に見ていただきたいです。



I:翻訳の魅力ってなんでしょうか?

李:「無駄なことは1つもない」って思います!
いろいろな作品にかかわらせていただいていますが、それは仕事だけではなくて、(日常生活の中で)友達とご飯を食べに行ったり、遊んだりするのも糧になるというか。自分が翻訳した作品も大作もあればそうでない作品もありますけど、過去にやった作品が次の作品に役立ったり、つながる瞬間があったり、1つも無駄になった作品はないです。作業中は、辛かったり大変だったりしますけど完成して、字幕だったら劇場で見たりとか、吹替だったらアフレコを見に行って実際に役者さんたちに演じてもらって、それがテレビで流れているのを見ていると、やっぱりこの仕事が好きなんだな、やっていてよかったなと感じます。
この仕事の楽しさは、同じ作品がずっと続かないので、飽きないというか、いつでも新鮮で。飽きっぽい性格の私が続けられている要因ですね。



I:いろいろなジャンルの作品を同時進行する時に工夫していることはありますか?

李:次にやる作品と同じようなジャンルの映画や、時にはマンガを見てその世界に入るようにしています。本で読むと時間がかかるので、手軽に短時間でその世界に入れるマンガとかは、いいですねえ。それまでのシリーズ作品などに染まっている思考を断ち切るためにもいいスイッチだと思います。
私は、午前中はこの作品をやって、午後はこの作品、というようにはできないんですよ。ですので、今日はこの作品をやって、明日はこれだけと。1週間のうちに2本同じ日に納品しなければいけない時は、月曜日から水曜日まででこの作品を終わらせて、木曜日から金曜日でこの作品と、一つ一つしっかり分けて作業しています。
それがいい意味で、切り替えになって楽しいというか。



I:吹替と字幕の両立はどうですか?

李:吹替が続くと妙に字幕が引き締まらないんです。私は最初、字幕が好きで吹替はちょっと苦手と思っていたんですけど...。吹替をやり始めると、吹替は会話なので「えーと」とか無駄な言葉が入ることで生き生きしてきますが、字幕はそれをやると引き締まらない字幕になってしまったり...。逆も同じことが言えると思います。
字幕だけとか、吹替だけとかではなくて、どちらもやると言葉の選択肢が広がると思います。



I:今後、どのような作品を翻訳したいですか?

李:コメディが好きで、特にブラックコメディがいいですね。
昨年、スターチャンネルで放送したジャック・ブラックとティム・ロビンスが共演した社会派のブラックコメディ『THE BRINK/史上最低の作戦』を翻訳させてもらって、とても楽しかったです。あと、ヒューマンドラマもやってみたいなあと思います。 でも、自分が好きではないと思っているジャンルの作品も、やってみたら意外と楽しい、好きかも、と新たな発見をするかもしれません。最初から決めつけずにどんなジャンルにも挑戦したいです。




『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
7月22日TOHOシネマズ シャンテほか
全国ロードショー
配給:東北新社 Presented by スターチャンネル

【スタッフ・キャスト】
監督:ジェイ・ローチ(『ミート・ザ・ペアレンツ』)
脚本:ジョン・マクナマラ
原作:ブルース・クック(「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」世界文化社刊)
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、
エル・ファニング、ヘレン・ミレン ほか
2015年/アメリカ/124分/カラー/ビスタ/5.1ch/字幕翻訳:李静華
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【【No.9】「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」を翻訳して】映像翻訳(字幕翻訳・吹替翻訳)にご興味のあるみなさま
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