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【映像・広告】カンヌライオンズ2012報告会 その5

2012年10月31日 14:00

最後の報告は、カンヌの目玉とも言える、「Titanium and Integrated Lions」。
このジャンルでは日本人ははじめての審査員。その方は、川村さんの同僚でもある、PARTYの原野守弘さん。
「PARTY」はカンヌのアジアでのフェスティバルである「Spikes Asia」にて「The Independent Agency of the Year」に選ばれました。

原野さんは、電通に入っていったん電通を辞め、また電通に入りADKと電通の合弁クリエイティブエージェンシー「ドリル」を立ち上げ、その後「PARTY」を設立されました。
原野さんからは短い時間でしたがエキサイティングなキャンペーンのお話をたくさんしていただきました。

この「Titanium」という部門が出来たのが2005年。その時の審査委員長がダン・ワイデンさん。ワイデン&ケネディの社長です。審査委員長を引き受ける代わりに、最も斬新なクリエイティビティを評価するチタニウム部門を作って欲しいと言って、事務局を説得したそうです。
その後2007年に現在の「Titanium and Integrated Lions」となりました。
ユニクロのブログパーツ「ユニクロック」が受賞したことを記憶されている方も多いでしょう。
ここで語られていた言葉が

「game changing idea」

というものでした。どういう意味でしょう?
遊び心がアイデアを変えていくとでも言うのでしょうか?
グーグルの社員は通常業務時間の20%を自分の好きなことに費やせ!という社命があります。そこから生まれ来る新しいクリエイティビティを期待してのこと。好きなことは、自らの力が強く発揮されるということを信じている企業だからこそ、出来ることなのでしょう。

また、原野さんは現在のカンヌでは

「広告」<「課題解決」<「発明」

となっている、その結果が今年のグランプリ作品のナイキの「Fuel band」ではないでしょうか?という論理には説得力がありました。

その前にいくつかの優れたキャンペーンを見せていただきました。
その中のひとつの「Help Remedies, "Help I Want To Save A Life"」は素晴らしいキャンペーンでした。
骨髄バンクのドナー登録をするのは

とても痛いのでは?
めんどくさいのでは?

という常識を根底から変えていったキャンペーンです。
このキットを自宅に置いておき、ひげそりなどで血が出たら綿棒にその血を含ませ事務局に送ってくださいと。 そのキットの中には「絆創膏」も入っています。そういうキットと仕組みが一体となったキャンペーンのものでした。
こうした公共的な仕事はグランプリを取ることが出来ないというルールになっているそうです。
そういうもののために「grand prix for good」という、グランプリに値するほどいいキャンペーンというものを作ったそうです。こうしたことにもアイデアが生かされそれが実行され続けているパワーに感心します。

その後、プルデンシャル生命保険の「Day One」というものを見ました。
この日は、どういう日かというとリタイアメントした日ということ。
毎日1万人の人々がリタイアメントを迎えており、それは社会人としては最後かも知れないが、新たな人生の始まりでもあるというキャンペーン。その日の写真を撮影して応募しよう、ということが行われました。 並行して、リタイアメントした人たちに対してインタビューをしたドキュメンタリーが作られました。過去の広告のようにバラ色の定年後でみんながハッピー!みたいなことは一切やりません。現実を真摯に見つめて、その中で懸命に生きている人たちがリアルにいるんだ!ということが伝わってくるものでした。これはそのCMです。

また、コロンビア共和国でゲリラ部隊となってジャングルでゲリラ活動をしている戦士たちに向けて、クリスマスは自宅に帰って家族と過ごそうというものを見せていただきました。メッセージと小さなプレゼントを透明の球体の中に入れて それをゲリラがいるジャングルの川に流すというもの。発光のLEDが入っており、夜はそれが光って幻想的な光景になりました。実際、この後、ゲリラを脱して自宅に帰った兵士たちがいるということも聞きました。

そして、今年のグランプリはナイキの「Fuel Band」。
ナイキの「Nike+」というプラットフォームは、ジョギングをするような人はご存知かと思います。毎日のランの記録が自動的にPCやスマホなどと連動して可視化していくというものです。
そこにナイキは、さらに付加価値をつけるための商品を開発しました。わたしたちが日ごろ活動しているすべての運動を「fuel」という単位にして、その達成度合いが毎日わかるというもの。
見た目は腕輪か腕時計のようで、時計の機能や万歩計の機能もついています。カロリーも計算され、まるでゲームのように達成を感じられる。日本ではまだ発売されておらず、並行輸入品で手に入れるしかありませんが、とても面白い商品だと思いました。

その商品開発と、それにまつわるプラットフォームすべてに対して贈られたのが、今年の「Titanium and Integrated Lions」でした。

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