映像テクノアカデミア

東北新社の学校だからプロへの近道!

業界トップクラスのノウハウと技術
サポートがあなたをプロにする

映像翻訳科

TRANSLATOR

映像翻訳科のSNS

映像翻訳科の公式ツイッター映像翻訳科の公式facebook映像翻訳科の公式インスタグラム

映像テクノアカデミア

MENU

映像翻訳科|東北新社の学校だから力が身につく!
プロへの近道!

ホーム映像翻訳科先輩方の作品紹介 > 【No.1】「チョコレート・ファイター」を翻訳して

【No.1】「チョコレート・ファイター」を翻訳して

李静華

2006年3月 映画翻訳専科卒業
(株)東北新社 音響字幕制作事業部 翻訳室

【 作 品 歴 】
劇場公開作品 「俺たちフィギュアスケーター」「覆面ダルホ~演歌の花道~」以上字幕作品
放送・DVDシリーズ
吹替作品 「スターの恋人」「BAD LOVE~愛に溺れて~」「Lの世界」 「キッドナップ」(字幕も)
字幕作品 「恋するマンハッタン」「フルハウス(韓国版)」「トムとジェリー」
DVD長編作品
吹替作品 「私たちの幸せな時間」「ジョージアの日記~ゆーうつでキラキラな毎日~」 「角砂糖」「おまえを逮捕する」「スピーシーズ4 新種覚醒」「うつせみ」
字幕作品 「愛の伝道師 ラブ・グル」「タイムジャンパー」

李静華さんは映像テクノアカデミア2006年度の卒業生です。

現在東北新社の日本語版制作部門の翻訳室に在籍し、同時にテクノアカデミアの講師も務められている、映像翻訳界ではこれからが期待される若手のホープです。

今回は彼女が手がけた、タイ映画のDVD日本語吹き替え版「チョコレート・ファイター」についての翻訳苦労話をあれこれ聞いてみました。

 
 


©2008 sahamongkolfilm
international all rights reserved.
designed by pun international

「チョコレート・ファイター」あらすじ
マフィアと日本のヤクザが争いを繰り広げるタイ。
日本人ヤクザ:マサシ(阿部寛)は、タイマフィアのボスの恋人ジンと禁断の恋に落ちる。しかし、マフィアのボスの復讐を恐れた二人は別れるが、ジンはマサシの子供を宿す。数年後、ジンは産れた娘のゼンといじめられっ子の少年ムンの三人で静かに暮らしていた。
娘のゼンは脳に問題があったが、優れた身体能力を持ち、しかもアクション映画を見ただけで、とてつもない格闘技を身につけることができた(この娘がチョコレート・ファイター)。

少年ムンはゼンの超能力を大道芸として披露し、チップを稼ぐことで重い病気にかかった母親ジンの治療費にあてていた。
しかしこれだけでは治療費に足りない。そこで少年ムンは母親ジンの未回収の借金を、ゼンと一緒に取り戻し、治療費にあてようとする。
しかしお金を貸した相手はどれも町の悪党たちで、普通の回収方法ではとても無理。そこでファイターのゼンは、身につけた武術で悪党たちを次々倒し、お金を取り戻すのだった。

しかし、この件がマフィアのボスの怒りを買い、ボスは見せしめのため少年ムンを人質にとる。ムンを取り戻すため、病の癒えた母親ジンはゼン(娘)をつれてマフィア一家に乗り込み、壮絶な戦いをはじめる(ワイヤーも何も使わない格闘アクションシーンの連続は必見です)。しかも、多勢に無勢のジンとゼンを救うため、ヤクザの世界から足を洗ったマサシもそこに駆けつけ、戦いは最高潮となる。

 

インタビュアー(以下「I」と省略):
インタビュアーとして、最初に李さんに謝らなければいけません。つまり、なによりも翻訳の良し悪しで日本語版の完成度は左右されると思うのですが、この作品はアクション映画で、台詞が少なく翻訳の出来にはあまり関係ないのではないか・・・もっと、台詞が多く、考えさせる作品を選ぶべきだったと反省しているんです。
 
 
 李:いえ、そんなことはないんです。逆に台詞が少ないため、ひとつひとつの台詞に気を使いましたし、翻訳の工夫も必要でした。
 
 

I:わかりました!(笑)・・・・・インタビューを臆せず出来そうな気がしてきました。
 
 
 李:まな板の鯉になっています、遠慮なく始めてください(笑)!
 
 

I:それではまず翻訳の手順から・・・・タイ映画でしょ、スクリプトもタイ語だったんですか?
 
 
 李:まさか・・・DVDの英語字幕版を作ったときのもので、タイ語とそれを英語に訳した字幕用スクリプトからの翻訳でした。
 
 

I:字幕用のスクリプトじゃ大変だったでしょう・・・・オリジナルの台詞と長さが違う、抜けはなかったのですか?
 
 

 李:大丈夫でしたね(笑)。それより助かったのは、すでに日本語字幕版が出来ていたので大変参考になったこと。逆に、心配したのはキャラクター名です。
アクションにつぐアクションで次から次へと敵が出てくるわけです、誰が誰だかわからなくなって来るんです。だから字幕版の翻訳者(小寺さん:注1)と監修(加藤さん:注2)が、登場人物の名前だけ先に日本語に訳して、画面と照合してくれていました。私の段階では完璧な状態でした。

 
 

注1:小寺さんは東北新社外画制作事業部・翻訳室の李さんの先輩です。本HPの「講師からのメッセージ」参照。
注2:加藤さんも同様に翻訳室の先輩です。本HP「卒業生インタビューN01」参照。

 

I:なるほど・・・・翻訳室の分業ですか(笑)!なんというありがたい職場なのか(笑)!でも加藤さんが監修って、彼女タイ語できるんですか?(ビックリ)
 
 李:学生時代、第二外国語がタイ語だったらしいんです。
 
 


©2008 sahamongkolfilm international all rights reserved.
designed by pun international

I:??・・・・第二外国語がタイ語・・・私なんかの理解の及ばないところです・・・・(笑)それにしても、最初に字幕をやった小寺さん、ハコ切り大変じゃなかったんですかね?
 
 

 李:これは私の経験からの想像なんですけど、小寺さんは大ベテランです、英語以外の作品もかなりたくさんやっているはずですし・・・・たぶんそんなに大変ではなかったと思います。それにスクリプトは英文ですから。前に私もロシア作品をやったことがあるんです。最初は大変なんですけど、やっていくうちに見当が付いてくるんです。迷ったところは監修者にも相談できますから(笑)・・・・
 
 

I:やっぱり、翻訳室の特権ですね。もし李さんがフリーだったとしたら大変でしょう?
 
 
 李:そうでしょうね。制作サイドが監修を付けてくれないと無理だと思います。
 
 

I:翻訳方法については解りました。次に内容についてお聞きしたいと思います。先ほども言ったように、話の展開としてはきわめて単純ですが、アクション映画としては実に面白い、よく出来ていると感心しました。特に主人公の少女のアクションはワイヤーを使っていないだけに、驚きとしか言いようがない!
 
 

 李:びっくりですよね!この作品をいただいたとき、同じプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の「マッハ!!!!!!!!」を勉強のために見ました。それもすっごく面白くて・・・・やっぱりワイヤーを使わない男性のアクションものでしたけど、「チョコレート・ファイター」はその女性版ですね。おっしゃる様に、複雑な筋の台詞劇ではぜんぜんなくて、単純な見せる映画です。
 
 

I:でもいくらアクション作品だとは言え、翻訳をやるからには「この作品はここを見てくれ!」、「ここが私の見せ所だ!」(笑)みたいなものはあるでしょう?
 
 
 李:善人と悪人がはっきりしているので、最低線としては・・・悪人はとことん悪く、主人公を中心とした善人は、優しい感じを出せたらと思いました。この映画、ひとことで言えば「愛」をめぐる話だと思うんです。「愛」ってとても手垢にまみれた言葉ですけど、それを恐れずに言うとそうだと思うんです。
物語の冒頭、マサシ(阿部寛)のナレーションがこのことを告げています。マサシは少年のころから傷ついたものに惹かれた・・だからジンに惹かれ、その娘のゼンを愛した。テーマははっきりしています。だからこそ、主人公を中心とした人たちの優しさを出すことは、とても大事だと思いました。

 
 

I:李さんの意図をお聞きして振り返ってみると、強い印象として残るのは、主人公が病気の母親を助けようというひた向きさと、それを助ける少年ムンの優しさですかね・・・でもこれらの印象、主人公の女性ファイターがあまりにも強くて、打ち消されてしまうんですよ(笑)。それと知的障害っていうのも特異な設定ですよね・・・・カンフーのアクション映画を見るだけで、技を習得できて、スーパーウーマンになってしまう。
ほら・・・・一回見ただけで、そのページに書いてあること全部覚えてしまうっていう・・・・・サヴァン症候群という才能があるでしょ、それの格闘技編とでも言ったらよいのか(笑)・・・
 
 


©2008 sahamongkolfilm international all rights reserved.
designed by pun international

 李:そうですよ、こんな設定ほんとに珍しい・・・でも、彼女の台詞には気を使いました。タイ語のニュアンスがわからないのと、スクリプトが英語ですよね。英語の翻訳がタイ語のニュアンスをどれほど汲み上げているか、分からないんです。もちろん英語より、日本語のほうが制限はきびしい・・・・ここらへんは注意しました。
 
 

I:もう少し具体的に教えていただけませんか。
 
 
 李:たとえば「お金を取り返す」という台詞は「おかね とりかえす」とか・・・
  主人公なので、台詞はいちばん多いわけです。繰り返しとかを多く使って、それでいて嫌悪感を与えないように注意しました。もちろん、このような印象は役者さんの演技によるところが多いんですけど・・・・・

 
 

I:悪役の台詞のほうは、どのような所で訓練したんですか?それとも地ですか?(笑)・・・・
 
 
 李:地ではありません!(笑)・・・・いろいろ情報は仕入れています。今回では特別なことというと、先ほど言った「マッハ!!!!!!!!」を見たことくらいでしょうか・・・・それで台詞の大体の感じをつかみました。
 
 

I:ということは、別の機会では相当な訓練をやっている?・・・・
 
 
 李:それは大げさです。意識的には、ハードボイルドなどを読んで、その世界にのめり込んじゃうんです。たとえば「新宿鮫」!!のめりこんで読んでしまうわけです、のめりこんだ感覚は体のどこかに生きているので、このようなヤクザ系の作品には役立っていると思います。
難しいのは頭だけで覚えていこうとする作品、たとえば・・・・法廷ものなんかは、台詞の使い方、いくら前もって勉強しても、忘れてしまってなかなか生かせないんです。だから・・・私は作品が来たときに、そのジャンルに関係する資料を一気に読み飛ばすほうが多いですね。

 
 

I:分かりました。ほかに、この作品について何か工夫したことはありませんか?
 
 
 李:最後はカットしてしまったんですが、使いたかった台詞があります。「これでも食らえ!」っていうマフィアのボスの台詞があるんです。そこには私は、はじめ「おどりゃあ!」って言わせたかったんです。でもよくよく考えたら、これ広島弁なんですよね。
「おまえ!」って言う意味なんですけど、今の時代にはどうかと・・・・もちろん、通じれば標準語かどうかは関係ないんですけど、でもタイ映画に広島の色が出てしまうのも問題じゃないかと思い、悩んでカットしてしまいました・・・・アッ!これ工夫じゃないですよね、なくなってしまったんだから!!(笑)

 
 

I:李さんが先ほど言われたように、これもアクション中心で台詞が少ない作品だから、逆に一つ一つの台詞に気を使った結果だからなんでしょう?
 
 
 李:
そうですね、それは言えると思います。異質な台詞が入ると、画面の印象すら変わってしまいますので、そこは気をつけています。

 
 

I:キャラクターと台詞・・・このキャラクターだったら、絶対にこの台詞はあり得ない・・・映像翻訳の一つの生命線ですね・・・
 
 


©2008 sahamongkolfilm international all rights reserved.
designed by pun international

 李:おっしゃっていることと同じことを言っているのかも知れないんですけど、どんな単純なドラマでもポイント(中心)があると思うんです。翻訳する前に、ここだとは意識してはいないんですが、キャラクターを設定し、それにあった台詞を創っていく・・・・そしていろいろな伏線を考えていくと、自然とキャラクターが動いて行ったりして、ドラマのポイントが出来上がっていくんです・・・・だから、台詞の形というのは大事なんだと考えています。
 
 

I:ハハハハ!今回のインタビューのポイントに当たったような感じがします!(笑)でも、そうやって創ったキャラクターイメージと実際の役者さんのキャスティングが、違ってしまうことってありませんか?
 
 

 李:私のような新人が、そんなこと、こんな公開の席で言えるわけないじゃないですか!!(笑)でも・・・・今回の作品はイメージどおりでした。主人公のファイターもとても上手だったし、特に彼女のお母さん役の林真里花(注:3)さん、ぴったりだなと思いました。
敵のマフィア組のほうでは、ボス役の天田益男さんの演技のピカイチなこと、それと子分のオカマちゃんたち(笑)・・・・おもしろくて、もっと喋ってほしかったくらいです。

 
 

注3:ここで話題となっている方 林真里花さんは円企画 天田益男さんは
青年座所属の役者さんです。

 

I:最後の質問になりますが、タイ映画であるこの「チョコレート・ファイター」の翻訳、李さんにとってどんな経験になりました?
 
 
 李:
ウーン・・・・難しい質問ですね・・・・まずタイ語だから分からなかったらどうしようという不安はありました。でも字幕があったし、監修者もいるし・・・・・それにすごく面白い映画だったんで、引くことはなかったです。

タイ語の特徴は語尾の発音を伸ばすんです、「カアー」とか「マアー」とか(笑)・・・・ここが英語といちばん違うところです。私はいつもだと台詞が長くなりがちなんですけど、今回はちがいました、録音現場ででもディレクターから言われて、台詞を足したりなんかもしました。
何を言いたいかというと、日本語版を創るのは協同作業なので、スタッフから注意をうけるとか・・・・内容に分からないことが出てくるとか、それは当たり前のことなんですよね。こんなときは必ず聞く、確認する、分からないのに知っているフリをしない・・・・そんなことがとっても大事だと思うんです。
特に自分の分からない言葉のときは特にそうだと思います。
それと・・・・この作品をやっていくうちに思い出したんですけど、わからない言葉について不安がるよりも、作品世界の中味をいかに知っているか、理解出来ているかのほうがよっぽど大事なんです。
先ほど言ったロシア映画についても、ロシア語の不安より、結局は作品内容である戦争中のことをどれほど知っているかが重要だったし・・・・・「Lの世界」をやる前も、ゲイの人たちの気持ちを知りたくていろいろ本を読んだり、最後はゲイクラブまで行ったんですよ(笑)。
 
 

I:苦労していますね(笑)!
 
 

 李:最後は日本語という台詞にしなければいけないので、結局勝負は作品の内容をどう理解するかになってくるんですよね。いつの間にか、「チョコレート・ファイター」の経験というよりは、教訓談になってしまいました(笑)・・
 
 

I:先ほど最後の質問と言ったんですけど、もう一つ最後のお願いが出てきました。いまの教訓談?(笑)を伺っていて、李さんが翻訳を行うにあたっての心構え全般のようなことをお聞きしたくなりました。簡単で結構ですので・・・・
 
 
 李:難しい質問はこれで最後ですね!(笑)・・・・(ジーッと考えて)一言です、どんな作品でも愛情をこめて仕事をやる、愛情がないといい作品には決してならない、これは私の格言です。だから自分の翻訳した作品はどれも可愛いんです。
 
 

I:亡くなった方ですが、東北新社のディレクターに中野寛治さんという方がおりました。
「大草原の小さな家」や「鉄腕アトム」などを創られた方です。中野さんが駆け出しの若いディレクター連中によく言ってました、「もっと作品を好きにならなければダメだ、自分がどんなつまらないと思う作品でも好きにならなければダメだ、好きにならないでどうして良い日本語版が創れるのか!」って。その通りだと思います。今日は本当にありがとうございました。


『マッハ!!!!!!!!』監督最新作!

この蹴りに世界がひれ伏す!!!

『チョコレート・ファイタ-』DVD

2009年9月18日(金)発売 ¥3,990(税込)
発売元:東北新社 / 販売元:東宝

【特典映像】
○来日インタビュー(ピンゲーオ監督・ジージャー・阿部寛)
○メイキング
○日本版劇場予告
○オリジナル予告編 ほか

【初回生産限定】
スペシャル☆アウターケース付

さあ、東北新社の学校へ!アカデミアへ出かけよう!

  • 今すぐもらえる 資料請求
  • 技術も磨ける 授業見学
  • 奨学金制度もある 受講申込

学校説明会やイベントも不定期で行っています。くわしくは各学科ページからご覧ください。

〒160-0022 東京都新宿区新宿1-18-14東北新社新宿ビル
映像テクノアカデミア TEL:03-3352-7084
職業紹介事業者免許No.13-ユ-309340

Copyright © 2023 映像テクノアカデミア All Rights reserved.