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【映像・広告】カンヌライオンズ2012報告会 その2

2012年10月11日 15:48

10月4日(木)、有楽町朝日ホール(マリオン)11階大ホールにて行われた、ACC主催『カンヌライオンズ2012報告会』2回目の報告会のレポートです。リンクの映像を見ながら、読み進めていってください。

その1続いて、「PR Lions」「Direct Lions」「Promo&Activation Lions」の報告がありました。
パネラーは、カンヌライオンズの審査員だった井口理(電通パブリックリレーションズ)、八嶋実(アサツーディ・ケイ)清水真哉(電通)内垣宏子(アサツーディ・ケイ)。モデレーターは河野俊哉さん(博報堂)。
みなさんのお話が上手で情報量が多く、頭をくるくるとまわしていかないと追いつかないような内容の濃い報告でした。
PR部門は2009年、Direct部門は2002年、そしてPromo&Activation部門は2006年に創設された新しいカテゴリーです。
日本では、PRは「パブリシティ」の意味で使われることが多いです。
たくさんのメディアに向けて記者会見をして、こうした活動をしていますよ!とか、こうした商品が出ました!などということを番組や記事で取り上げてもらうこと。これがパブリシティの基本です。
しかし、現在世界ではPRというと

「public relations」

の意味で使用されることが多いです。 今年のグランプリは、プエルトリコのキャンペーン。
昔のプエルトリコの名曲に新たな歌詞をつけて、往年のミュージシャンに唄ってもらおう!というものです。
ものすごく怠惰な歌詞が前向きなものに変えられ、それが新たな曲として発売され、プエルトリコ中でヒットしたそうです。
そのキャンペーンを紹介したプレゼンテーションビデオが流されます。
Film部門以外では、こうしたキャンペーンを紹介したビデオなどがとても重要で、このビデオの構成力や完成度によって受賞のランクが違ってくる、ということを審査を経験された方々から聞きました。
世の中の課題を見つけ出し、何らかのコミュニケーションのアイデアによって、解決や変化を起こして行く。
これが、この「Cannes Lions International Festival of Creativity」で評価される、唯一無二の評価基準なんじゃないかと思いました。

その他にも、ハンバーガ―のバンズの上のゴマが点字になっているという、視覚障害者向けの南アフリカのキャンペーンや、アルツハイマーを疑似体験してもらうために、スーパーの展示場所を突然変更する、というキャンペーンの紹介がありました。


続いて「Direct」部門。全体を通じて、各パネラーたちのお話の中で何度も

「beyond advertising」

という言葉を聞き、広告を超えたコミュニケーションが、これからの高度資本主義がいきわたった社会に必要な新たなクリエイティブのスタイルなんだ!ということが良くわかりました。

このジャンルでのグランプリはAMEX(American Express)の「Small Business Gets an Official Day」のキャンペーンでした。
これは、昨年もカンヌに出品されていたのですが、2年目の今年になって受賞したというもの。
そこには、活動を続けて拡げていったことへの評価もあったと思われます。1年目よりも2年目の方が広く浸透し、オバマ大統領もツイートする。そんなことを紹介したビデオでした。

クリスマスシーズンの始まりで、アメリカが最も買い物をする日である「ブラックフライデーの次の日」を、AMEX主導で、オフィシャルな「地元小売店の土曜日(Small Business Saturday)」とするキャンペーンです。参加店にはバッヂやポスター、ソーシャルメディアキットを配布。ソーシャルメディアキットでは、自分の店の宣伝ビデオ、Facebookページ、foursquareチェックインシステムを簡単に作れるようにしたのです。その結果、アメリカ中に広まり、オバマ大統領をはじめ政治家も応援するキャンペーンになったのです。

また、コカ・コーラの米国で最も視聴率が高くなるスーパーボールに向けてのキャンペーン、「Polar Bears」もユニークなキャンペーンでした。
スーパーボールのCMの広告主はペプシコーラ!コカ・コーラはその「スーパーボール」に向けて、CGで作られた白クマ2匹をキャンペーンキャラクターとしました。
Aの白クマとBの白クマは、互いに別のチームを応援しています!
その応援のシーンが「スーパーボール」の試合中にリアルタイムにWEB上で流されます。試合の進行に応じて白クマたちが反応するのです。
PCやi-padなどで白クマを見て、テレビでスーパーボウルを見ながらWスクリーンで楽しむという新たな視聴スタイルの提案でした!結果、この白クマは40数分間も見られるという結果がもたらされました。


続いての「Promo&Activation」部門でも、魅力的な事例がたくさん紹介されました。

SAMSUNGのデジカメのキャンペーン。視覚障害者の子供たちが撮影した写真を、手で触れるようにレリーフにして、写真とレリーフを並行して展示をするというもの。
触って見られるということをみんなが知ることによって、価値感が大きく拡がるキャンペーンになったと思われます。

ニュージーランドのアップルタイザーのキャンペーン。自然素材にこだわった商品ということで、6パックスのパッケージ内にわざと林檎の小枝を忍ばせて出荷しました。 しばらくすると購入した消費者からクレームが来ます。そしてこの会社は、そのタイミングで「お詫び広告」を出します。自然素材にこだわっているからこそ起きたことです。と。

こうしたマーケティングのことを「炎上マーケティング」といいます。

リスクギリギリで行われているこうした事例がカンヌにはたくさんあります。
誰かがおっしゃっていましたが、日本ではクライアントと問題を共有しすぎるあまり、低い位置で握手してしまう傾向があると!
それを乗り越えてこそ、よりたくさんの人の気持ちを動かすキャンペーンになり、それがたまたま受賞につながるのではないでしょうか?


もう一つ刺激的な事例をご紹介します。
「TNT」のヴァイラルムービー
ある広場に"何かが起きる"という「ボタン」が設置されています。
それを通りがかりのサイクリストがボタンを押す。と、この広場で大変なことが起きるというもの。
数分の出来事はその周辺の人々を驚かせます。寺山修司が行っていた路上劇みたいですね。
その様子が撮影されており、それがバイラルとなってネットで爆発的に拡がったそうです。実際、その映像はとても面白く衝撃的でありました。

最後にレゴのスターウォーズのキャンペーンの紹介です。
大きな丸い筒を回すと、それが手回しオルガンとなっており、スターウォーズのテーマ曲が流れる。
丸い筒はレゴで作られており、その筒の上にはスターウォーズのスターシップや、登場キャラクターなどが配置されているというもの。それ自体がアート作品となっており、子どもたちが実際に回している映像も流されました。


その3に続きます。

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