映像翻訳科|東北新社の学校だから力が身につく!
プロへの近道!
何を一番教えたいか 『3つの観点から』
岡田壮平 映画翻訳者
代表作/[劇場字幕]…「レオン」「ショーシャンクの空に」「スイス・アーミーマン」「リング」「ワイルドスピード」シリーズ 「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」 「ラスト・フル・メジャー」「かけひきは、恋のはじまり」「ケープタウン」「サボタージュ」「ドライヴ」「フローズン・グラウンド」
大前提
字幕は人に読んで頂くものです。できうる限り「誤訳」はあってはなりません。内容を正しく伝えられないからです。そして「読みやすいこと」も大事です。そのためには、「1秒4文字」という字数制限をできうる限り守ることです。読み切れない字幕を書いても何の意味もありませんし、そういう字幕は読んで頂く方々に対して失礼です。翻訳者が威張っちゃいけません。
漢字続きの訳も読むスピードを著しく低下させ、イントネーションに頼る訳もどこにアクセントを置いて読んでいいか迷い、読み切れなくなりがちです(例:でもって言ったんでさ)。
字幕を読むために映画なりDVDを見る人なんていません。映像が発するメッセージや感動を楽しんでもらう手助けとして字幕が存在するのであり、字幕翻訳者はあくまでも”黒子”なのです。私もより良い黒子になれるように今も努力を続け、そして教えています。
基礎というもの
習うより慣れろと授業でいつも言っています。楽器の練習と同じなのです。週に1回だけ教えてもらっていてもプロにはなれません。残りの6日間をどう過ごすかが大切です。字幕の決まりごとは学校で週に1度、1年間教えても教え切れないほどあります。私は「字幕を学ぶ方法」を教えるのであって個々の事例を一つ漏らさず教えるわけではありません。とてもムリです。
そこで皆さんに実践させているのが”リライト”です。つまり単純にDVDの映画の字幕を書き写すことです。学校で勉強のやり方や基礎の基礎を学び、自宅でリライトを通じて”練習”をし細かいルールを学ぶ。これがプロになる一番の近道だと思っています。
また「訳す際には感情移入が大切だ」とか「ムダな言葉は徹底してそぎ落とせ」などといった助言を授業の中で行っていきますが、この助言のほとんどは私が大先輩の翻訳者から教わった貴重な言葉なのです。これを惜しむことなく皆さんに伝え、皆さんもこれを自分の翻訳に役立て、そしてやがては次の世代に伝承していってほしいものです。
テクニカルな面
私は皆さんに「口語を大切に」と教えています。つまり自分が普段、どうしゃべってるかということに立ち返って訳せということです。”そんなの簡単さ”と思ってはいけません。どんなに注意しているつもりでも「英語に引きずられた翻訳臭い日本語」になる場合があるからです。
では”翻訳臭くてどこが悪い?”。訳に余計な言葉が入っていたり分かりにくかったりで字幕が黒子に徹することができず、また画面と心を一つにすることもできないため、読む人を疲れさせてしまうのでダメなのです。プロの訳じゃありません。私もまだまだ修業中ですが、どうしたらより良い日本語訳を書けるか、そのテクニックや留意点を、かなりの時間を割いて授業で詳述しています。実はこれも大先輩から学んだ貴重な助言の「伝承」なのです。
最後に
何となく硬い話になってしまいました。でも映像翻訳はとても楽しい仕事です。体力的には厳しいものがありますが、「感動のセリフを自分で書ける」という大きな喜びと醍醐味があるのです。”この感動をぜひ観客の皆さんに伝えて映画を生かさなきゃ”という黒子の楽しい使命感です。
「君の瞳に乾杯」という意訳もこうして生まれた名訳だと思います。ただし残念ながら、このような意訳が今の世の中で通用するかどうかは微妙な問題になっています。「英語で言ってることと違うじゃないか。誤訳だ!」と言われかねないからです。逆に言えば「英語で言ってるとおりに訳せばいい」となりますが、これでは感動を日本語で十分に伝えられないと思います。翻訳者はコンピューターじゃないのです。
プロになるのは大変かもしれません。でもドラマを訳すのが大好きで「感動を伝える黒子」になりたいという熱いハートフルな方々は、ぜひ教室へ集まって下さい。